放課後等デイサービスにおける「ヒヤリハット」とは? 事故を未然に防ぐために重要なポイントを解説!
放課後等デイサービスにおいて、重大な事故には至らなかったものの、一歩間違えれば大事故につながりかねない「ヒヤリハット」と呼ばれる事例は数多く発生しています。関係者にとって、ヒヤリハットは安全管理体制の改善や職員の意識向上を図る貴重な機会となります。また、放課後等デイサービスにおける児童の「行方不明」はここ数年でニュースにもなり、年々問題視されてきています。この記事を読んで、ヒヤリハットの重要性を再確認しましょう。
以下では、放課後等デイサービスでよくあるヒヤリハット事例と、再発防止に向けた具体的な対策をご紹介します。
ヒヤリハットとは
ヒヤリハットは語感から想像できるとおり、「(たまたま何事もなかったけれど)ヒヤリとした・ハッとした」という意味をもとに生まれた言葉です。
重大な事故を防ぐために、療育中に起こった「ヒヤリハット」を逐一報告・共有し、事前に事故や怪我を防ぐという目的があります。
ヒヤリハット事例
<事例1>利用者同士のトラブル
遊んでいる最中に、ある利用者が別の利用者を押したり、物を投げつけたりしてトラブルになった。
集団活動中に、意見が対立し、口論やけんかに発展しそうになった。
<対策>
・利用者一人ひとりの特性や発達段階を把握し、適切な関わり方や声掛けを行う。
・トラブルが起きやすい場面を想定し、事前にルールや約束を確認しておく。
・感情表現やコミュニケーションの指導を積極的に行う。
・必要に応じて、個別支援や個別プログラムを実施する。
<事例2> 誤飲・誤嚥
小さな部品や誤飲しやすいおもちゃを誤飲しそうになった。
食事中にむせたり、噎せたりしそうになった。
<対策>
・利用者の年齢や発達段階に合ったおもちゃや遊具を用意する。
・食事介助時は、利用者のペースや状態をよく観察し、適切な声掛けやサポートを行う。
・誤飲・誤嚥のリスクが高い利用者には、個別に食事形態や姿勢について指導を行う。
<事例3> 転倒・ケガ
段差につまずいて転倒しそうになった。
遊具の使用方法を誤り、ケガしそうになった。
運動中に、他の利用者とぶつかりしそうになった。
<対策>
・施設内の環境整備を行い、段差や滑りやすい箇所を解消する。
・遊具の使用方法や注意事項を分かりやすく掲示し、利用者に説明する。
・利用者の体力や運動能力に合わせた活動内容を設定し、適切な指導を行う。
・必要に応じて、ヘルメットやプロテクターなどの安全装備を着用させる。
<事例4> 飛び出し・迷子
職員の目を離した隙に、利用者が外へ飛び出したり、迷子になったりした。
<対策>
・利用者から目を離さないようにし、常に職員が付き添う。
・持ち場を離れるときなど職員同士声がけをする
・外出時の点呼をこまめに行う
・送迎時、児童が家の中に入るまで見届ける
・事業所出入口、裏出口や窓などにも鍵を設置し対策を施す
<事例5>その他
アレルギーを持つ利用者に、誤ってアレルゲンを含む食品を提供しそうになった。
利用者の体調変化を見逃し、病状が悪化しそうになった。
災害発生時に、適切な避難誘導を行うことができなかった。
<対策>
・利用者の個人情報や健康状態を正確に把握し、職員間で共有する。
・定期的に職員研修を行い、緊急時の対応マニュアルを共有する。
・地域の防災訓練に積極的に参加する。
ヒヤリハット情報の共有と分析
ヒヤリハット情報を収集・共有・分析することは、再発防止策を検討する上で重要です。以下のような方法で、ヒヤリハット情報の有効活用を図ることができます。
1.ヒヤリハット報告書の作成・提出
職員一人ひとりが、ヒヤリハットと感じた出来事を記録し、報告書を作成する。
2.ヒヤリハット事例の共有・検討会
定期的に職員間でヒヤリハット事例を共有し、原因分析と再発防止策を検討する。
3.リスクアセスメントの実施
施設全体のリスクを評価し、潜在的な危険箇所を特定する。
ヒヤリハット報告書はなぜ必要?
1.重大事故の防止
ハインリッヒの法則によれば、1件の重大事故の背後には、29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットが存在すると言われています。
つまり、ヒヤリハットを軽視せず、しっかりと報告・共有・分析することで、重大事故を未然に防ぐことができるのです。
2.安全意識の向上
ヒヤリハットを報告することは、職員一人ひとりが安全意識を高めるきっかけになります。
「自分はヒヤリハットを起こしてしまった」という経験を通して、安全に対する意識が向上し、より慎重に行動するようになります。
また、ヒヤリハット事例を共有することで、職員全体で安全に対する共通認識を醸成することができます。
3. 職場環境の改善
ヒヤリハット事例を分析することで、職場環境における潜在的な危険箇所を発見することができます。
こうした危険箇所を把握し、適切な対策を講じることで、より安全な職場環境を作ることができます。
ヒヤリハットと事故報告の違い
ヒヤリハットとは、ヒヤリハット事例を共有・分析することで、再発防止策を検討し、事故を未然に防ぐためのものです。
一方、事故報告とは:実際に被害が発生してしまった出来事を指します。
障がい児通所支援事業所は、「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第15号第52条第1項)に基づき、サービスの提供による利用者のけが又は死亡事故等が発生した場合、市町村へ報告する義務があります。
事故原因を分析し、再発防止策を講じることで、同様な事故の再発を防ぐ必要があります。
届出の方法は市町村によって異なる場合があります。詳しくは各行政のHPなどからご確認ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?事故や怪我の元はこのように日常の中に潜んでいますが、日頃から身近に潜んでいる事故の原因を完全にゼロにするのは不可能です。大切なのは、ヒヤリハットを単なる偶然の出来事として捉えるのではなく、再発防止の機会として活かすことです。
関係者全員が協力し、ヒヤリハット情報を共有・分析することで、安全な環境を作り上げることが重要です。
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